ゆるふわコンペブログ

交渉コンペの考察を載せていきます。

ユニドロワとは何か

ラウンドAが法律ゲーなのは分かった。じゃあ出題範囲はどこなのかを考えよう。債権総論や行政指導といったように年特有の事項も別途存在するが、毎年出るのは、国際私法(特に国際商取引法)、契約法、民事訴訟法である、

 

仲裁は例年、ネゴランド国とアービトリア国という架空の(変な名前の)国を舞台としている。「仲裁も交渉も、国際的なビジネスを題材とした」ということだ。異なる国の企業間で行われる商取引とそこでの紛争が題材になっている。

 

両国とも日本ではない国だから、ラウンドAで適用される法(準拠法)は日本民法ではない。国内法人同士であれば当然に日本法が規律するが、異国間の取引だと当然に適用される法が決まるわけではない。日米企業間に紛争が生じ、日本に裁判管轄、英米法を準拠法となった結果、日本の裁判所が英米法を適用して、判断するさえもこともある。まして英米法だと判例法。管轄は神戸地裁で準拠法はイギリス法という事例があって、当事者が判例を出してきた。お互いアメリカの弁護士雇って判例を出して、このようなルールを形成すべきなんて主張する。そんなことも起こり得る。異国間の取引では、どの国の法を適用するというのが大きな問題なのだ。

 

コンペでは例年ユニドロワ国際商事契約原則(UNIDROIT)という規則を準拠法としている。これは、国際的な商事契約の取引原則について、日本を含む各国の学者と実務家が検討して、1994年に条文の形で表し、解説を付したものである(中田8頁)。

 

さらに、訳者はしがきによれば

 

国際取引は、そこに適用される法が国によってバラバラであることが大きなコストとリスクの要因となるため、早くから法統一に向けての動きが盛んであった。とりわけ著名なのが、国際売買に適用される法の統一をめざした国連のウィーン売買条約である。…しかし、この条約の対象が売買に限られていることから、適用対象を契約一般に拡大し、国際取引における統一契約法のモデルを策定して、当事者が合意で契約中に取り込めるようにする、というのがユニドロワ国際商事契約原則の当初の目的であった。

 

とある。どうやら崇高な目的があることは分かるだろう。つまり、国によって契約法が違うから、万国共通法を作ってしまおう、そうすれば上のような問題は解決するということだ。

 

同じ目的で定められたものとしてウィーン条約がある。こっちでもいいじゃないか。それはよく分からない。民法ウィーン条約だと学力や学習の進み具合で勝負がついてしまうからだという言う人がいるが真偽は不明である。

 

いずれにせよ、ユニドロワも法である。そこで、未知の条文に対して、法律学の知識を用いて条文解釈をできるか、ということを審査員は見ている。コンペを謎解きや純粋なディベート感覚で捉え、法律から逃げられると考えるのは間違いである。なお、ウィーン条約は司法試験の選択科目国際私法でたまに出ることがあり、一応司法試験の範囲でもある。